富の源泉
富は、人的資本と金融資本から構成されると言われます。簡略化した式で表すと以下のように表現できます。
富= 労働による富+資本家としての富
= 人的資本+金融資本
=(収入-支出)×働く期間
+資産(金融資産や不動産等)
ここで、注意しなければならないのは、労働者として稼いだ収入から生活費や税金などの支出を差し引いた金額が、貯蓄として資産に追加されるという関係です。この収支がプラスでないと、不労所得の源泉である資産が増えていきません。
人的資本(HC : Human Capital)とは、将来、働いて稼ぐことができる総収入の現時点で金額です。例えば、20歳から65歳までの45年間にわたり毎年500万円を稼ぐ場合、20歳の時点での人的資本は、
人的資本(at 20)=500×45y=22,500万円
となります。では、40歳や60歳ではどうでしょうか。
人的資本(at 40)=500×25y=12,500万円
人的資本(at 60)=500× 5y= 2,500万円
となります。
ここから分かることは、人的資本は、年齢とともに減少していくということです。若い頃はいつまでも働けるような気持ちでいますが、いつかは働けなくなります。退職後は、公的年金や積み上げた金融資産からの配当や元本を取り崩しながら生活していく必要があるのです。
なお、退職金などの一時金は、給料の後払い的な要素がありますので、貯蓄による金融資本に近い性質を持っているといえます。
人的資本では、年収ランキングなどの特集記事のように収入面に注目があたりがちです。しかし、実際には無駄な支出を減らすことが、収入を増やすことよりも確実で効果が大きいといえます。
金融資本(FC : Financial Capital)とは、人的資本から生じる給料などの収入から生活費や税金などの支出を差し引いて貯蓄して築いた資産をいいます。安全資産として手元に現金として置いていたり、銀行の預金に預け入れていたりする場合や、証券会社で株式や債券などの金融商品を購入して保有している場合や、不動産などの実物資産などで運用している場合が想定されます。
いずれにしても何らかの資産で運用しているわけです。不動産投資の借入金のようにレバレッジをきかせている場合は、運用資産から借入金を控除した純資産(NAV : Net Asset Value)でみる必要があります。
人的資本と金融資本の関係は、一般的に時の経過に対して逆の動きをします。年齢を重ねるとともに、人的資本が減少していくのに対して、毎年、貯蓄していれば金融資本は増加していきます。すなわち、年齢とともに、人的資本は減少していくのに対して、金融資本は増加していきます。
例えば、新入社員の場合は、人的資本が最大で、金融資本は最小であるのに対して、定年を迎えたビジネスパーソンの場合は、人的資本が最小で金融資本は最大となると考えられます。そして、引退後は、公的年金や金融資本からの運用益や元本の一部を取り崩しながら生活費を賄って生きていくことになるわけです。最終的には、金融資本を使い切るか、あるいは相続財産として相続人に継承していくことになります。
よって、富を増やすためには、年齢を重ねるとともに、人的資本をいかに減らさないか、そして、金融資本をいかに増やしていくかが鍵となります。