稼ぐ力
稼ぐ力とは何でしょうか?
私は、希少性とニーズが稼ぐ力の源泉ではないかと思います。
まず、希少性について考えてみます。非常に多くの時間を費やして高いスキルを身につけたとしても、参入者も多く希少性が高いといえないのであれば、競争が激しいレッドオーシャンでの戦いとなり、努力の割には一向に報われないかもしれません。
一方で参入者が少なく希少性が高い場合には、競争が緩いブルーオーシャンでの戦いとなり、努力の割には報われるといった状況が発生しているかもしれません。
ただし、希少性だけではダメです。そこに、ニーズがなければ取引が発生せず稼ぐことはできないからです。
そして、このニーズの本質は、社会課題の解決ではないかと思っています。社会は、人と人との結合体であり、その人と人との関係の中で、さまざまな解決すべき課題が発生し、その課題を支援した人に対して、見返りとして報酬が発生するのではないでしょうか。
もっとも、社会課題といっても、いろいろあります。例えば、おなかがすいたといったものも社会課題でしょうし、住むところや着るものが欲しいもそうでしょう。ただ、解決するのが難しい高度な社会課題の方が、解決した際の効用が高いでしょうから、報酬も高くなるのではないでしょうか。
例えば、病気になったので治療してほしい、海外の大手企業を買収したい、グローバル企業として課税の適正化を図っていきたい、複雑なシステムを開発してほしいなどです。
よって、稼ぐ力を高めるために、希少性が高く参入障壁が存在するブルーオーシャンにおいて、ニーズが強く比較的高度なサービスを提供していくことが大切になると考えます。
具体的には、希少性といった観点からは、メンバーシップ型雇用中心の日本においては、特に大企業では、終身雇用が概ね維持されていますので、やはり、給料の高い企業に新卒で入社することは重要です。欧米に比べて転職が難しい日本においては、いったんは、希少性を獲得できるのではないでしょうか。
ただし、今後もそういった状況が続くとは限りません。終身雇用を前提に社内であぐらをかいて人的スキル向上に努めない場合、含み損の状態となっていますので、リストラや転職を余儀なくされると、たちまち、その含み損が実現し、人的資本が急激に低下する恐れがあります。
逆に、今後は、ジョブ型雇用中心の欧米のように、最初の会社でスキル向上に努め、途中で大学院などで学び、さらに転職によりキャリアアップを図ることも一般的になってくると予想されます。
このほか、希少性の観点からは、国家資格による独占業務といった参入障壁の存在から、医師、看護士、弁護士や公認会計士といった職業も一定程度の希少性があると思われます。
今後は、AIやビックデータを活用できるITスキルのニーズが高まってくることが予想されます。逆に、一般的な事務については、多くのペーパーワークがRPAやChatGPTなどにより自動化されるため、ニーズは減少していくでしょう。
さらに、日本においては、今後、高齢者の割合が増加することから、高齢者向けの住宅、食事や医療サービス等のニーズは高まりますし、相続や中小企業の事業承継M&Aといったニーズも高くなると予想されます。
以上、稼ぐ力を高めるために、人生100年時代、今だけに囚われることなく、しっかりと将来を見据え、時代の変化に合ったスキルを身につける努力が必要です。そして、その努力が無駄にならないように、社会課題、すなわちニーズを見極め、どんなフィールドで働くかをしっかり考えて行動することが大切になります。